福岡高等裁判所宮崎支部 昭和49年(ネ)38号 判決 1974年11月10日
主文
一 原判決中、被控訴人(附帯控訴人)菊池ハルミに対する控訴人(附帯被控訴人)ら敗訴の部分を、次のとおり変更する。
1 控訴人(附帯被控訴人)らは、各自、被控訴人(附帯控訴人)菊池ハルミに対し、金四、〇〇〇円及びこれに対する昭和四六年三月二日から支払ずみまで、年五分の割合による金員を支払え。
2 被控訴人(附帯控訴人)菊池ハルミの、その余の各請求をいずれも棄却する。
二1 原判決中、被控訴人(附帯控訴人)菊池宗隆、同菊池節子、同菊池忠雄、同菊池茂に対する、控訴人(附帯被控訴人)ら各敗訴の部分を、いずれも取り消す。
2 同被控訴人(附帯控訴人)らの各請求をいずれも棄却する。
三 本件附帯控訴並びに附帯控訴による拡張請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人(附帯控訴人)らの負担とする。
事実
第一当事者の申立て
一 控訴人(附帯被控訴人、以下単に「控訴人」という。)らは、「原判決中、控訴人ら敗訴の部分を取り消す。被控訴人(附帯控訴人、以下単に「被控訴人」という。)らの各請求をいずれも棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決並びに「本件各附帯控訴をいずれも棄却する。附帯控訴費用は、被控訴人らの負担とする。」との判決及び附帯控訴による拡張請求棄却の判決を求めた。
二 被控訴人らは、「本件各控訴をいずれも棄却する。控訴費用は、控訴人らの負担とする。」との判決並びに附帯控訴として、「原判決を次のとおり変更する。控訴人らは、各自、被控訴人菊池ハルミに対し金二〇八万円(原審における請求額金一九八万円を含む。附帯控訴の方法により請求を拡張)及びそのうち金一九八万円に対する昭和四六年三月二日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、その余の被控訴人らに対し各金五三万円(原審における請求額各金五〇万五、〇〇〇円を含む。附帯控訴の方法により、それぞれ請求を拡張)及びそのうち各金五〇万五、〇〇〇円に対する前同日から支払ずみまで前同割合による金員を支払え。附帯控訴費用は、控訴人らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求めた。
第二当事者の主張並びに証拠関係
当事者の主張につき、左記一、二のとおり訂正、付加するほかは、原判決の事実摘示と同一である(ただし、原判決二枚目表一四行目と同枚目裏三行目にそれぞれ「自転車」とあるのをいずれも「足踏み自転車」と、同末行目に「見透し」とあるのを「見通し」と、同三枚目表三行目と同四行目にそれぞれ「侵入」とあるのをいずれも「進入」と改める。)から、これを引用する。
一 控訴人ら
1 原判決五枚目裏一行目に「第二項の(一)は認める。」とあるのを、「第二項の(一)の事実のうち、控訴会社が加害車を所有し、本件事故当時、これを自己のために運行の用に供していたこと、及び控訴会社が控訴人大田原を使用し、同控訴人が控訴会社の業務を執行中に本件事故が発生したことはいずれも認めるが、その余の事実は否認する。」と訂正する。
2 被控訴人らの後記二の2の主張事実は否認する。
二 被控訴人ら
1 原判決三枚目表八行目の冒頭から同枚目裏四行目の末尾までを、
「(1) 亡時宗の逸失利益金四〇四万五、八二一円、時宗は死亡時六一才で、推定余命は一四、五年、稼働可能年数は七、二年、収益は年間一二四万四、八六八円(左記農業収入と養豚収入の合計)であり、控除すべき生活費を収益の二分の一とみて、ホフマン式計算法(係数六・五)により中間利息を控除すると頭書金額となる。」
と訂正し、さらに同四枚目裏二行目に「三、〇〇〇、〇〇〇万円」とあるのを「四〇〇万円」と、同八行目に「合計五、〇〇〇、〇〇〇円」とあるのを「合計二四〇万円」と、同九行目に「三、〇〇〇、〇〇〇万円」とあるのを「八〇万円」と、同一〇行目に「各五〇〇、〇〇〇円」とあるのを「各四〇万円」とそれぞれ訂正する。
2 請求拡張の原因
被控訴人らは、控訴人らの不当な本件控訴提起により応訴を余儀なくされ、弁護士杉本勤に控訴審における訴訟を委任し、その手数料として、被控訴人菊池ハルミにおいて金一〇万円、その余の被控訴人らにおいて各金二万五、〇〇〇円宛計二〇万円を支払うこととなつたが、これらは、控訴人らの不当な抗争により被控訴人らに生じた損害にほかならないから、被控訴人らは、原審における請求に加えて、控訴人ら各自に対し、右各該当金員の支払を求める。
理由
一 昭和四六年三月一日午前六時ころ、延岡市昭和町二丁目一五番地先交差点(以下、「本件交差点」という。)において、西(幸町方面)から東(川原崎方面)に向けて進行中の訴外菊池時宗運転の足踏み自転車(以下、「本件自転車」という。)と北(中之瀬町方面)から南(昭和町方面)に向けて進行中の控訴人大田原章典運転の普通貨物自動車(以下、「本件自動車」という。)とが衝突し、右事故により時宗が死亡したことは当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によると、時宗の右死因は頭蓋骨骨折、死亡日時は、前同日午前九時一八分、死亡場所は、同市瀬の口町甲斐整形外科医院であつたことが認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。
二 そして、被控訴人菊池ハルミが亡時宗の妻であり、その余の被控訴人ら四名がいずれも時宗の子であることは当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によると、亡時宗の子は右の被控訴人菊池ハルミを除くその余の被控訴人ら四名のみであることが認められる(これを左右するに足りる証拠はない。)から、被控訴人らは、前記の昭和四六年三月一日、時宗の死亡により、その相続分に応じ、被控訴人菊池ハルミが三分の一、その余の被控訴人らが各六分の一ずつの割合で、同人の一切の権利義務を承継したものと認めるのが相当である。
三 1 控訴会社が、本件自動車を所有し、本件事故当時、これを自己のために運行の用に供していたこと及び控訴会社が控訴人大田原を使用し、同控訴人が控訴会社の業務を執行中に本件事故が発生したことは、いずれも当事者間に争いがない。
2(一) 前記一の事実に〔証拠略〕を総合すると、本件交差点は、幅員約一二メートルの南北に通じる国道一〇号線と東西に通じる市道(本件交差点の東側では幅員七メートル、同西側では幅員九メートル)とがほぼ直角に交差している信号機のない交差点で見通しはよいこと、控訴人大田原は、右国道一〇号線を時速約五五キロメートルで前記のとおり本件自動車を南進させ、本件交差点の手前にさしかかつたが、同交差点の南約二五〇メートル先の延岡市昭和町一丁目宮崎ガス前先交差点の信号機の信号にのみ気をとられ、本件交差点の左右及びその付近を注視、確認することなく、漫然と前記速度で本件交差点に進入し、本件自転車と衝突するまでこれに全く気付いていなかつたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
(二) ところで、本件交差点の直前にさしかかつた際の前認定のような事情のもとにおける自動車運転者としては、左右道路から同交差点に進入してくる車両の有無を確認し、前方注視を厳にして進行すべき法律上の注意義務があるものというべきところ、前認定の事実によると、控訴人大田原には、右注意義務を怠つた過失があつたものと認めるのが相当である。
3 したがつて、控訴会社は、自動車損害賠償保障法第三条、第四条、民法第七一一条、かつ民法第七一五条、第七〇九条にもとづき控訴人大田原は、民法第七〇九条、第七一一条にもとづいて、各自、被控訴人らに対し、本件事故によつて生じた時宗及び被控訴人らの各人的及び物的損害を賠償すべき義務があるものといわなければならない。
四 そこで、被控訴人ら主張の各損害について判断する。
1 亡時宗の逸失利益
(一)(1) 〔証拠略〕によると、時宗は明治四二年六月一五日生まれで、本件事故当時、満六一才の健康な男子であり、その平均余命は一四、五年、そのうち、少なくとも七年間はなお農業及び養豚業に従事して稼働可能であつたこと、同人は、みずから開こんした約五〇アールの畑に、パイプを引き水タンクを設置するなどして入念に手入れをし、ばれいしよ、かんしよ、かんらん、大根その他の野菜類を栽培してこれらを市場に出荷し、またこれら収穫物の一部は、漬物にしたうえ出荷していたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
(2) しかし、時宗の農業収入については、〔証拠略〕によるも、前記各作物の作付面積、生産量、出荷量の適確な数値を認定することができないので農業収入の実額の認定は不可能であるが、〔証拠略〕によると、昭和四五年度の宮崎県における平均農家の農業所得は、経営耕地面積五〇アールでは、おおむね金二三万円であつたこと、右土地をもつとも効率的に利用して、前記ばれいしよ、かんしよ、かんらんなどを栽培した場合を仮定すると、約八三万五、〇〇〇円の粗収入が得られ、これから通常の農業経営費約三〇万円を控除すると、その農業所得は約五三万五、〇〇〇円となることがそれぞれ認められ、これらの事実に前記(一)認定の事実をあわせ考えると、時宗は右畑作により年間少なくとも三〇万円を下らない収益をあげていたもので、また、その後も同程度の収益をあげ得たものと推認するのが相当であるところ、右畑が借地であつて年額八、〇〇〇円の地代を支払つていたこと及び被控訴人菊池ハルミが右畑の耕作につき、年間三五日程度の補助労働を提供し、その対価が年間三万五〇〇〇円相当であつたことは被控訴人らにおいて自陳するところであるから、時宗じしんの年間農業収入は前記三〇万円からこれらを控除した金二五万七、〇〇〇円とみるのが相当である。
(3) 次に養豚収入についてみるに、〔証拠略〕によると、時宗は昭和四五年二月一日から昭和四六年一月三一日までの一年間に成豚一一六頭を市場に出荷して二二三万二、四三五円の支払を受け、経費として、小豚一一六頭の購入代金及び手数料として一一三万七、一三八円を、飼料代として七〇万四、五一〇円をそれぞれ支出したことが認められる(これを左右するに足りる証拠はない。)から、結局養豚収入としては、差引き金三九万〇、七八七円となることが計算上明白である。なお、〔証拠略〕によると、右養豚については、時宗の二男である被控訴人菊池忠雄が昭和四五年七月ころから、若干手伝つていたことが窺えるが、その程度は一、二か月間豚に餌を与える手伝いをしたにすぎず、養豚経営はその作業を含めて、時宗じしんがこれを行なつてきたことが認められるので、前記金額をもつて、時宗じしんの養豚収入とみてさしつかえないものと考える。
(4) そうすると、時宗の年間純益は、右農業収入と養豚収入との合計額であることが計算上明らかな金六四万七、七八七円となる。
(5) 〔証拠略〕によると、時宗は本件事故前、妻である被控訴人菊池ハルミ、子である被控訴人菊池忠雄、同菊池節子と生活を共にしていたことが認められ、右の事実と前記四の1認定の事実から考えると、時宗の生活費は前記年間純益額の二分の一程度と評価するのが相当であるから、前記年間純益額の五割にあたる額を基礎とし、就労可能年数を前記七年として、複式ホフマン式計算法(係数五・八七四三)により年五分の割合による中間利息を控除して、本件事故当時における時宗の逸失利益の現在額を算定すると、金一九〇万二、六四七円(一円未満切捨て)となることが明らかである。
(二) 過失相殺
前記一、同三の2の(一)の各事実に〔証拠略〕を総合すると、前記のとおり、本件交差点は、幅員一二メートルの国道と幅員七メートルないし九メートルの市道とがほぼ直角に交差している信号機の設置のない見通しのよい交差点であつて本件事故当時、交通整理は行なわれていなかつたこと、本件自動車と本件自転車との衝突地点は本件自動車の進路通行帯の中央付近であつたこと、本件事故当時は早朝、かつ降雨中で、あたりは薄暗らかつたが、本件自動車が前照燈をつけて進行していたのに対し、本件自転車は無燈火であつたこと、前記時宗は本件交差点を幸町方面(西)から川原崎方面(東)に向つて通過していたことがそれぞれ認められ、これらを左右するに足りる証拠はない。
右認定事実によると、本件交差点は、いわゆる交通整理の行なわれていない交差点にあたり、かつ本件自動車の進行してきた国道は、本件自転車の進行してきた市道より、その幅員において明らかに広いものといえるから前記時宗としては本件自動車の進行を妨げてはならない注意義務があつたのにこれを怠つた過失があつたものというべきであり、また、前認定の状況のもとでは自転車運転者としても前照燈をつけて進行する注意義務があつたものというべきところ、これをも怠つた過失があつたといわざるを得ない。
そして、前認定の控訴人大田原の過失と時宗の右過失を比較検討すると、その過失の程度の割合は、前者が六割、後者が四割と解するのを相当とするから、右時宗の前記逸失利益の損害額について右の割合により過失相殺をすると、その額は、金一一四万一、五八八円(一円未満切捨て)となることが計算上明らかである。
2 亡時宗の慰藉料
以上認定の諸事実(時宗の過失を含む)その他諸般の事情を考慮すると、時宗が本件事故によつて精神的苦痛をこうむつたことは明らかであり、これに対する慰藉料は金一五〇万円をもつて相当とするものと認める。
3 ところで、時宗の死亡により、被控訴人菊池ハルミが三分の一、その余の被控訴人らが各六分の一の割合で同人の一切の権利義務を相続により承継したことは前記のとおりであるから、前記四の1の(二)及び四の2の時宗の各損害額に対する被控訴人らの相続承継額は、被控訴人菊池ハルミが金八八万〇、五二九円(一円未満切捨て)、その余の被控訴人らが、各金四四万〇、二六四円(一円未満切捨て)となることが計算上明らかである。
4 被控訴人ら固有の慰藉料
以上認定の諸事実(時宗の過失を含む)その他一切の事情を考慮すると、被控訴人らは、本件事故により精神的苦痛をこうむつたものであるところ、被控訴人菊池ハルミに対する慰藉料は金五〇万円、その余の被控訴人らに対する慰藉料は各金三〇万円をもつて相当とするものと認める。
5 被控訴人菊池ハルミの負担した治療費
これを認めるに足りる証拠はない。
6 被控訴人菊池ハルミの負担した葬儀関係費用
いずれも〔証拠略〕を総合すると、被控訴人菊池ハルミは、前記のとおり亡時宗の妻として、善正寺の代表役員野中豪雄に対し昭和三六年六月七日には戒名料として金三万円を、昭和四六年七月二〇日には回向料として金二万円をそれぞれ支払つたことが認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。しかし、被控訴人らのその余の右主張事実(被控訴人菊池ハルミ自身が負担したその余の葬儀関係費用に関する事実)については、これを認めるに足りる証拠はない。右認定事実によると、金三万円と金二万円との合算額であることが計算上明らかな金五万円が本件事故によつて生じた被控訴人菊池ハルミの亡時宗に対する戒名料並びに回向料関係の損害の額ということができる。
7 損害のてん補
被控訴人菊池ハルミの前記相続承継額(四の3)及び固有の慰藉料(四の4)並びに戒名、回向関係費用(四の6)の合計額は金一四三万〇、五二九円、同じくその余の被控訴人らの前記各相続承継額(四の3)及び各固有の慰藉料(四の4)の合計額は、各金七四万〇、二六四円となることが計算上明らかであるところ、被控訴人らが本件事故にもとづく損害のてん補として、自動車損害賠償責任保険金五〇一万六、〇六八円の支払を受けたことは当事者間に争いがなく、これを前記被控訴人らの各相続分に応じて按分すると、被控訴人菊池ハルミが金一六七万二、〇二二円(一円未満切捨て)、その余の被控訴人らが各金八三万六、〇一一円(前同)の支払を受けたこととなることがこれまた計算上明らかであるから、右各保険金をもつて、被控訴人らの前記各人的損害合計額の弁済に充当すると、それらの損害はいずれも既にてん補されていることが明らかである。
8 被控訴人菊池ハルミの物的損害
前記一の事実に〔証拠略〕を総合すると、本件事故により本件自転車が大破し、使用に耐えなくなつたこと、本件自転車は被控訴人菊池ハルミの所有であつて、本件事故当時の価額は、少なくとも金四、〇〇〇円を下らなかつたことが認められ、これを左右するに足りる証拠はない。しかし、本件事故当時における本件自転車の価額が金八、〇〇〇円であつたとの被控訴人らの主張事実については、これを認めるに足りる証拠はない。右認定事実によると、金四、〇〇〇円が本件事故によつて生じた被控訴人菊池ハルミの本件自転車関係の物的損害の額ということができる。
9 被控訴人らの弁護士費用
〔証拠略〕によると、被控訴人らは、控訴人らが被控訴人らに対し本件事故によつて生じた被控訴人ら及び時宗の各損害の賠償をしなかつたので代理人弁護士南条保に対し本件第一審訴訟を委任し、被控訴人菊池ハルミにおいて、弁護料として金二〇万円を支払うことを約し、また、本件第一審判決言渡し後、弁護士杉本勤に対し、控訴審における本件訴訟を委任して、被控訴人らにおいて前同様金二〇万円(被控訴人菊池ハルミ金一〇万円、その余の被控訴人ら各金二万五、〇〇〇円)を支払うことを約したことが認められ、これに反する証拠はない。しかし、本件事故によつて時宗の生命が害されることにより生じた被控訴人ら及び亡時宗の各人的損害が、被控訴人らにおいて支払を受けた前記自動車損害賠償責任保険金によつて既にてん補されていることは、前記のとおりであり、また、前記四の8の被控訴人菊池ハルミの物的損害額金四、〇〇〇円も、同四の7のとおり、同被控訴人関係の受給保険金額から人的損害額を控除した額以下の金額であることが計算上明らかであるから、結局控訴人らの負担となすべき右弁護士費用の損害は存しないものというほかない。
五 そうすると、被控訴人菊池ハルミの本訴各請求は、控訴人ら各自に対し、前記物的損害金四、〇〇〇円及びこれに対する本件不法行為の後である昭和四六年三月二日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度においては、いずれも正当としてこれを認容すべきであるが、その余の各請求は、いずれも失当としてこれを棄却すべきであり、その余の被控訴人らの本訴各請求は、いずれも失当として、これを棄却すべきである。
六 よつて、右と一部結論を異にする原判決中の被控訴人菊池ハルミに対する控訴人ら敗訴の部分を、主文第一項の1、2のとおり変更し、また、右と結論の全部を異にする原判決中のその余の被控訴人らに対する控訴人らの敗訴の部分は、いずれも不当であるから、民事訴訟法第三八六条によりこれらを取り消し、被控訴人らの各附帯控訴並びに附帯控訴による各拡張請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九六条、第八九条、第九二条但書、第九三条第一項本文を各適用し、主文第一項の1につき仮執行宣言を付するのは相当でないものと認め、これを付さないこととして、主文のとおり判決する。
(裁判官 桑原宗朝 大西浅雄 川端敬治)